カラフルハート


1年の頃、クラスの違う彼を知ったきっかけは、ほんの些細なこと。
いや、私にとっては運命の出会い。

通学生徒や通勤者の多いバスの中で立ちスマホをしていた私、天野雫(あまのしずく)は、ものの見事にバス酔いしてしまった。

自業自得な赤の他人なのに、鍛治くんは私のバス酔いに気づいて座っていた席を譲ってくれたんだ。


──『大丈夫ですか? 気分悪いならここ座ってください』


その時の空気が包み込まれるように優しくて、声が綺麗で心地よくて、バス酔いしたことも忘れて心臓がドキドキしていた。


彼に出会う前の私は当然知らなかった。

本物の恋をすると、こんなふうに世界が鮮やかに色づいて見えるということに。

恋をすると、その人のことで頭がいっぱいになって、知らなかったいろんな感情が溢れてくることに。──


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