虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

赤い星が流れ落ちる

 
 不安の影を隠しながら、私と九条くんの毎日は続いて、気が付けば式の日取りとか式場の手配とか、彼との結婚が具体的なスケジュールとしてカレンダーに乗るようになっていた。

 正直、実感が湧かない。
 
 田村部長に全てを奪われて、身一つでJ・F・ケネディ国際空港に降り立ったあの日から、まだ半年くらいしか経っていない。

 そこで、20年前に離ればなれになっていた九条くんと再会して、エアラインパイロットでお金持ちになっていた彼と、一緒に暮らすようになった。

 一緒に暮らし始めて、九条くんと私は、お互いの気持ちを確かめ合った。

 九条くんには紫月さんという婚約者がいて、私は田村部長との過去がトラウマになっていて、二人の間にはさまざま障害があったけど、二人で手を携えて、時には仲間たちの力添えで、危機を乗り越えてきた。

 そしてハワイのオアフ島で、私は九条くんのプロポーズを受けた。
 九条くんは私を連れて、私の両親へ結婚報告もしてくれた。

 重なる幸せ。
 でも九条くんの抱える翳りも、私は知ってしまった。

 20年前に行方不明になったお父さんの影を未だに追い求めている、九条くんの心の傷。
 そんな彼を気遣う、九条くんのお母さん──瑠美おばさんの想い。

 目まぐるしく動く日々と、多くの人々の想いの中で、私と九条くんは結婚しようとしている。

 半年前の私がこの未来を予言されたら、絵空事と鼻で笑っただろう。
 もしかしたら、田村部長に裏切られたばかりの私は、この上まだからかうのかと、予言した相手に掴みかかったかもしれない。

 でも全ては現実の出来事として、私の前で繰り広げられ、形になりつつある。

 幸せの絶頂のはず。
 なのに何故だろう、不安がよぎる。

 今の幸せがガラス細工のお城のように、一瞬で粉々に砕け散ってしまうような──。

 不安に苛まれるとき、私は九条くんに甘えて、彼に激しく愛してもらった。
 私が彼の生命を宿せば、また二人の間に確かなページが刻まれる。

 九条くんがいないときは、彼にもらったブルーダイヤのペンダントと、サファイアのペアリング、そしてプロポーズの証のエンゲージリングを並べて、九条くんとの優しい思い出に、身を委ねた。

 そんな、ある日のことだった。
< 178 / 235 >

この作品をシェア

pagetop