虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

いつか王子様が


 真理にうまく乗せられた感じで、私は九条くんのマンションに引越すことになった。

「嬉しいよ、理恵。ありがとう」

 さして多くもない荷物の整理が済むと、九条くんは引越しのお祝いをしようと言って、あのダイニングキッチンのオーブンで、大きなローストビーフを焼いてくれた。
 お礼を言わなくちゃならないのは、私なのに。

「乾杯しよう、理恵」

 ローストビーフを切り分け、ビンテージの赤いワインのコルクを抜いて、優しくグラスについでくれる。

 二人だけの、豪華なディナー。
 九条くんはシェードを開け放って、ダイニングに宝石のようなミッドタウンの夜景を映し出してくれる。

「音も欲しいね」

 そう言って九条くんがチョイスしたのは、ディズニー映画のサントラだった。

『星に願いを』『ホール・ニュー・ワールド』『いつか王子様が』──。

 幼い日に胸をときめかせた、スクリーンの優しい音楽たち。

「理恵、ディズニー好きだったよね」

「覚えててくれたの?」

 にっこりと笑う彼に、思わず涙がこぼれそうになる。

 美味しい料理と優しい音色に包まれながら、私は思っていた。
    
 九条くん。
 私の王子様は、あなたですか──?
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