同居人は無口でクールな彼



赤いペンキはもちろん用意していた。

ただクラスで買ったものではなくて、他のクラスが使わなくなったペンキを使わせてもらっていた。

そのペンキももうなくなっていて、数人が頭を抱えている。


「まだお金余ってる?」

「うん、ペンキくらいなら買えると思う」

「じゃあ、ペンキ買ってこようぜ」


作業をしながら、だんだんと雲行きが怪しくなっていった。

嫌な予感というのは、だいたい当たってしまうんだ。


「のーのーむーらー」

「野々村さーん」


ペンキを買おうと言い出した人たちが、口をそろえてわたしの名前を呼ぶ。

こうなると思った。

きっとわたしに仕事がふられるって。


「赤いペンキ買ってきて」

「今日中に終わらせないといけないから、ダッシュでよろしく」




< 154 / 285 >

この作品をシェア

pagetop