同居人は無口でクールな彼
「ねえ、希美!話聞いてる?」
「え?聞いてる聞いてる」
窓際の前の方に数人集まっている女子の中心には、あの佐藤希美さんがいた。
あの時見ていたのは、佐原さんじゃなかったのかな。
あの時のことをいまだに追及されていないし。
無意識のうちに彼女を見ていたようで、ふと彼女と目が合った。
教室で誰かと目が合うなんてこと、今までにはなかったと思う。
わたしたちは数秒見つめ合っていた。
「希美、今日変じゃない?」
「え?そう?」
先に目をそらしたのは、彼女の方だった。
何事もなかったかのように、友人との話題に戻っていく。
うらやましいな……
わたしも友達に囲まれて青春したい。
わたしにだって、友達はいたことがある。
中学校2年生までは、仲がいいと呼べる友達がいた。
でも気づいたら、わたしから友達が消えてしまったのだ。
きっとわたしの態度が気に入らなかったからだと思う。