旦那様は征服者~慎神編~
無能な人間
それから数日後。
慎神が仕事中、新汰から電話がかかってきた。

「慎神様、新汰さんです」
奏瑪が電話に出て、慎神に取り継ぐ。

「何?」
『王子、久しぶりぃ!』
「うん、そうだね!」
『王子に会いたい!』
「なんで?」
『姫君を見てみたいから』
「………」
『王子?
…………怒っちゃった!?
ごめんね!』

「今、仕事忙しい。
また今度にして!」
そう言って、通話を切った慎神。
ネックレスを握りしめた。

「慎神様、時間ですので一度屋敷へ行ってきます」
「あー、よろしくね!」
「はい、かしこまりました」
頭を下げた奏瑪の頭をポンポンと撫でた、慎神。

仕事を再開した。

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奏瑪は屋敷に戻り、莉杏を呼ぶ。
「莉杏様、お待たせしました」
「あ、はい。すみません!お忙しいのに……」
「いえ」

莉杏は週に一度、奏瑪と一緒に食材の買い出しに出る。
それ以外は慎神に、慎神以外との外出は禁止されている。
なので、一週間分の食材や消耗品などを買い込むのだ。

車内は、シンと静まり返っている。
慎神に、必要以上に奏瑪と話すなと言われているからだ。
「奏瑪さん」
「はい」
「今日は、二ヶ所行っていただきたいんですが……」
「それは構いませんが、慎神様に買い物の時間は一時間以内と決められています。大丈夫ですか?」
一週間分を買い込むので、意外と時間がかかるのだ。

「はい。できる限り、急ぎます!奏瑪さんにはご迷惑にならないようにしますので!」

「僕ではありません」

「え?」
「莉杏様が、慎神様の狂愛を受け止めなければならないからです」
「あ、大丈夫ですよ!すみません、ご心配をおかけして……」
「いえ…慎神様は、異常な方なので……」

奏瑪にほとんど持ってもらいながら、いつもの店で買い込む。
「いつも、すみません!重いのに」
「いえ。後は、デパートの地下ですよね?」
「はい!慎神くんの好きな大海老があるってネットで見つけたんです!」
「フフ…さようですか」
微笑んで言う莉杏に、奏瑪も微笑んで答えた。

「え……」
莉杏が驚くのも、無理はない。

常に無表情の奏瑪。
慎神の逆鱗に触れないように、一定の距離を保ち莉杏と接している。
最初は嫌われているのかと思っていた、莉杏。
でも慎神の言いつけを守る為には、そうせざる得ないのだ。

そんな奏瑪が、初めて莉杏に微笑んだ。
莉杏は驚愕し、目を丸くしていた。

「え!?あ、す、すみません!」
「いえ…」
奏瑪も、無意識だったのだろう。
かなり動揺していた。
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