旦那様は征服者~慎神編~
最低な感情
それから、頻繁に新汰から電話がかかってくる。

そして今日も、莉杏を何度も抱いて莉杏が寝てしまった夜更け。
煙草を咥え火をつけようとしていると、慎神のスマホに着信が入る。

画面に“豹磨(ひょうま)”の文字。
新汰は京極(きょうごく)組の若頭で、豹磨は新汰の忠実な部下だ。

「もしもし?」
火のついていない煙草を咥えたまま、少し声のトーンを下げて電話に出た。
『あ、ごめんなさい!寝てました?』
「ううん。莉杏が寝てるから」
『え?じゃあ…また後で……』
「いい!後でかけ直してほしかったら、そもそも出ない」
『そうですよね。すんません!』
「ところで、何?」
『アニキが、会いたいって聞かなくて……』
「莉杏?」
『はい』
「わかってるよ。でも、心の準備がまだなの。
莉杏を僕以外の人間に見せるなんて、しかも相手が男なんて……考えただけで吐き気がする」
『でも、相手はアニキですよ?
慎神さんから、莉杏さんを取ったりしないですよ?』

「新汰が取るなんて思ってないよ。
莉杏を他人に会わせるのが嫌なの。
莉杏の目に僕以外が映るのが嫌なの。
莉杏の耳に僕以外の声が入るのも、僕以外の奴と話すのも嫌なの!!」

『慎神さん…』
「とにかく!まだ、無理!!」


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「よし!お掃除完了!」
その頃莉杏は、掃除をしていた。
なんといっても広い屋敷、掃除をするだけで一苦労だ。
【莉杏は、何もしなくていいんだよ!僕の大切な奥さんなんだから。家事も奏瑪にさせてさ!莉杏は傍にいてくれるだけで十分なんだよ】
と、慎神は言う。

しかし慎神がいない平日の日中は、何かしていないと不安で堪らないのだ。

「夕食の下準備でも、するか!」
今日は確か、ハンバーグが食べたいと言っていた。
考えながら、キッチンに向かった。

すると、ある音が鳴る。

天摩邸の門に車が通過したことを知らせる音だ。
門から屋敷まで、車で五分程かかる広い敷地の天摩邸。
莉杏は、この音が鳴ると玄関まで慎神を迎えにいくのだ。
「あれ?もう、帰ってきた?」
スマホを確認すると、慎神から帰るというメッセージがない。
とりあえず、防犯カメラを確認する。

「これ、慎神くんの車じゃない」
案の定、慎神ではない。

「え……誰…?
と、とにかく、慎神くんに連絡━━━━━━」
ピンポーン!!

慎神に、来客があっても“居留守”をつかうように言われている、莉杏。
声を潜め、慎神に電話をした。
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