旦那様は征服者~慎神編~
小さな拒絶と安心
「おはよ、莉杏」
「おはよう…」
「まだ、眠い?」
「ん…でも、起きなきゃ…朝ごはん……」
「いいよ、ゆっくりで……
今日は朝、ゆっくり行くから……」

あれからほぼ毎晩、ほとんど寝せてもらえない程に抱かれている、莉杏。
それは莉杏の中に、ごく小さな拒絶を感じるようになったからだ。

朝が起きれないことが、多くなっていた。

少しゴロゴロして、ダイニングに向かう。
奏瑪が朝食の準備をしていた。
「おはようございます。慎神様、莉杏様」
「おはよ!」
慎神がポンポンと奏瑪の頭を撫でる。
莉杏は小さく微笑み、奏瑪に頭を下げる。
言葉はお互いに交わさない。

最近の慎神は、奏瑪に対しても強い嫉妬を示すようになったからだ。

「慎神くん、今日のお買い物……」
「うん、わかってるよ!
“僕”と行こうね!お昼過ぎに連絡するね!」
「うん」

慎神が屋敷を出て、すぐに電話がかかってくる。
『莉杏、会社に着くまで話そうね~』
「うん」
『あ~あ、莉杏を会社に連れていけたらなぁ』
「でもそれじゃ…慎神くん、お仕事できないよ」
『できるよ。むしろ、莉杏が傍にいた方がはかどるし!』
「そっか」

『あ、莉杏。会社着いちゃった…また後から連絡するね!』
「うん、慎神くん行ってらっしゃい」

通話を切り、しばらくスマホを見つめる。
「これからずっと…これが、続くのかな?」
思わず、呟いていた。

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「慎神様」
「んーなぁに?」
「莉杏様のことで、一つよろしいですか?」
「何?」
社長室で書類に目を通しながら、耳だけ傾ける慎神。

「少し…縛りつけすぎでは?」

「は?」
視線を奏瑪に注ぐ。

「慎神様、お気づきですよね?
莉杏様から、笑顔がなくなってきている」

「それは、どうゆう気持ちで俺に聞いてんの?」

「え…?」

「“同情”?
それとも…………“愛情”?」
「慎神様…」

「どっちも、いらない感情だよな?お前には…!」

「しかし━━━━━━」
「奏瑪」
「は、はい」
「これ以上、やめろよ?
これ以上、俺の莉杏に関することをお前の口から聞きたくない。奏瑪のことは絶ちたくない」


「莉杏ー!お待たせ!」
「うん。慎神くん、お仕事お疲れ様。
ごめんね、忙しいのに……」
「ううん~莉杏に会えるから、嬉しい!」

買い物中も、慎神は莉杏からせっして放れない。
視線、意識……全て。
カートを押している莉杏を後ろから抱き締めている。
しかも…後ろから時折こめかみや頬、耳にキスをするのだ。
周りに見られていることなど、全く気にしない慎神。
莉杏は当然恥ずかしがっていたが、最近は慣れてきて何も感じなくなっていた。

「慎神くん、今日は何食べたい?」
「んー、そうだなぁ~」
慎神は、更に莉杏に頬擦りしながら考える。

「あ、エビフライ!
莉杏のエビフライ好き!」
海産物のコーナーを見ながら、慎神が答えた。

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