進藤真莉(しんどうまり)、高校一年生。

 頭脳レベルは万年平均。赤点も取らないけど、百点も取ったことがない。通信簿は音楽に四がついただけで、あとは全部三だった。うそ。体育は二だったかも。

 受験する高校は、家に近いところよりも制服が可愛いところを選んだ。
 薄いベージュの生地がメインで、襟は濃いブラウン。リボンとプリーツスカートも襟と同じ色だけど、リボンにはチェックの刺繍が入ってる。中学の制服はブレザーだったから、セーラー服に憧れていたんだ。

 一目見た瞬間心奪われた双葉桜(ふたばさくら)高校の偏差値が、そんなに高くなくてよかったって心底思う。


「ごめん千絵(ちえ)っ。ちょっとトイレ行ってくるーっ」
「ええ!真莉がこの歌一緒に歌おうよって言ったのに!」
「だってもう限界だもん〜!すぐ戻ってくるから、先歌っててっ」

 私はそう言うと、勢いよく扉を開けた。通路の眩しい光に目を細める。

 二人きりでカラオケボックスを訪れておいて、トイレが近いのはご法度だ。なのに私はこれでもう四回目。歌い始めてまだ二時間も経っていないのに。

 便座に座り、慌てて用を足しながらも次の選曲は何にしようかと考える。
 午前で授業の終わる土曜日はほぼ毎週、千絵と一緒に何時間もマイクを握っているから、そろそろネタも尽きてきた。

 だけど飽きない。歌うの大好き。フリータイムって最高っ。

 手を洗う最中に聞こえてきたBGMに、次に入力する歌が決定した。