もしも本当に、真人くんの好きな人が私だとして。前に彼が言っていた諦めたい理由、頑張れない理由の中に、『友人が好きな人だから』というのがあるのだろうか。
優也くんの好きな人だから、私を諦めたいのだろうか。
「真莉?」
コンクリート一色だった視界に、ライム色の半袖シャツを着た優也くんが映り込む。
「どうしたの?なんか今日、ボーッとしてない?」
「ご、ごめんっ」
「謝ることじゃないけど」
絡めた指をグーパーグーパーして、「起きろ〜」と私に刺激を送ってくる。その無邪気さに、微笑んだ。
水族館に向かう途中だった。バスの停留所で彼が時刻表を見てくれている隙に、意識が飛んだ。
真人くんが私を好き。その不確定な事実が頭を支配する。
「来週の土曜、何時に帰ってくるか、まだ分からないよね?」
バスの車内。空席に私を座らせて、彼は立った。
「う、うん。まだ分からないなぁ」
優也くんには真人くんを誘ったこと、まだ話していない。
「だよね、ごめんごめんっ」
伝えるべきなのだろうか。彼氏じゃない、優也くんにも。