テスト期間も終わって、あとは水曜日の終業式までテキトーに授業を聞き流していれば夏休み。そう思っていたのに、うちのクラスの担任はたっぷりと宿題を出してくる非情な人間だ。
 そして私は、その宿題をこなすのに必要な教材一式を全て机の中に忘れてきてしまった。

 なので、日曜の朝から学校(ここ)にいます。

「あったあった」

 誰もいない教室に、窓の外から蝉の大合唱が届く。誰かといる時はそんなに気にならないけれど、ひとりでいる時は煩く響く。
 黒板の日付は昨日のまま。誰かのいたずらか、(かど)すれすれの場所に小さく「万歳もうすぐ夏休み!」と書かれていた。私はそれを指でなぞって笑みを溢す。

 私服で校内に踏み入るのも初めてだったし、魔法で人間が消されたようながらんとした廊下も新鮮だったし、覗いた教室の黒板は全て昨日の日付。時空をワープした気分にもなった。

「ありがとうございました」と用務員に頭を下げ、訪問表に退室時刻を記入する。

 9:32

 この暑い中三十分ほどかけてやって来たのに、数分での任務完了はどこか物足りない。
 コンビニでアイスカフェラテを購入した私は、優也くんとケバブを頬張ったあの公園に足を運んだ。