ニューヨークでの研修が終わり、日本に帰ってきて数週間。
私は晃輝に連絡を取ることもなく、今まで通りに何事もなかったかのように過ごしていた。
お互いの連絡先も交換していないし、きっともう私のことなんて忘れているだろう。
もちろん、私は忘れることなんてできなかったけれど……。
「椎名さん、コレ見た?」
いけない。仕事中だった……。
考え事をしていた私に、森下さんが1冊の雑誌を差し出してくる。
その表紙には、話題の大手企業の次期社長に聞いてみた!とイマドキのタイトルがつけられている。
「この雑誌がどうかしたんですか?」
「その記事に載ってるの、うちの親会社の御曹司なんだって。全く、いいよな……イケメンで地位もある奴は」
私はへぇーっと相槌をうちながら、雑誌をパラパラとめくった。
「……えっ!?」
「あっ、ソイツだって……」
仮にも親会社の御曹司をソイツ呼ばわりしたことには、突っ込まないでおく。