酒飲み女子がどきどきさせられてます

好きです。

7年前に別れた元カレと偶然に再会した翌日。
私は熱をだして会社を休んでしまった。

めったに風邪をひ医いたりしないのだか優との再会は相当応えたようだ。
嘔吐や発熱といった体の悲鳴を受け、彼との別れがまだ癒えてなかったことを痛感するのだった。

一日休んでいる間、ずっとぼーっとしたり、うとうととしていた。

時折やってくるネガティブモードに体調不良が加わるともうベットから出ることすら億劫になってしまっていた。


夕方近くになり、1本のラインが入った。亮太郎からだ。

  『これから何か食べる物がいくよ。リクエストは?』

そういえば昨日から何も食べてなかったな、、、このままじゃ亮太郎が心配しちゃうと思う。

昔から亮太郎は優子にあまあまだったし、実の親より心配性だった。
えいっと足を上げ勢いをつけてベットから起き上がった。

  『アイス よろしくです』

と返事を打ち、そのままシャワーを浴びることにした。汗で髪も体もべたべただった。

亮太郎が来るまでに急いで洗い、新しい部屋着に着替えた。
髪を乾かそうと鏡の前に立つ。
鏡に映る自分の目が泣き過ぎて重く腫れていた。
ずっと眠っていたにも関わらず目の下には隈があるし、唇は乾燥してカサカサになっている。

「ひっどい顔!!これじゃ明日仕事行けないじゃない!!」

引き出しからお高い美容液シートマスクを引っ張り出し、化粧水を塗った顔に丁寧に貼り付けた。


  ピンポーン

チャイムが亮太郎の訪問を知らせた。
シートマスクを貼り付けたまま、頭に巻いたタオルがずり落ちないように右手で支えながら玄関のドアを開けた。

「いらっしゃ、、、、、」
訪問者の顔を見て優子は静止画像のように固まった。
そこにいたのはは亮太郎ではなく八木君だったのだ。

「いやあああああ!!」

と叫んで、ドアを閉める。

「え?ちょっ香坂さん!俺です!八木です!」
ドンドンとドアを叩きながら八木が呼びかけた。

「なんで八木君!?」
「口田課長に頼まれました」
「亮太郎に?」
「あ、、、すみません。本当は俺が頼みました。香坂さんのことが気になって、、、しまって、、、」

八木の口調はだんだんゆっくりと、小さくなっていった。

「、、、、、、、、、、」
「、、、、、、、、、、」

玄関のドアを挟んで、二人の間に沈黙が流れた。

「急に来てすみませんでした。アイスとか、いろいろ買ってきたので、、、袋、ここにかけておきますね」
ガサガサとドアノブに買い物袋をひっかける音がした。

ガチャ。
ドアをほんの少しだけ開く。

「ごめんちょっと待っててもらえる?」

八木の返事を聞くと、急いでベットの布団を直す。
脱ぎ散らかしたままの昨日着ていた洋服を押し入れにぶち込んで、頭に巻いていたタオルを洗濯機に入れた。

ぐるっと1Kの部屋を見渡して、指さし確認をして、玄関を開けた。

「お、お待たせしました。ど、どうぞ」
と室内に招き入れた。優子は少しうつむいたままだ。

「突然にすみません。これ、スポドリとか、おにぎりとか、ゼリーとか、、、あ、アイスもあるんで冷蔵庫に」
大きく膨らんだお買い物袋を受け取ろうとした。
「おも、、、」
2袋にパンパンに入った食べ物たちは思ったより重くて、キッチンのテーブルに運んでもらった。

「わざわざごめんね。ありがとう、、、」
冷蔵庫に移しつつ、
「てか、量が多すぎじゃない?」
と笑ってしまった。

「いやあ、何がいいかわかんなくてあれやこれやと籠に入れたらこんなことに」
八木君は肩をすぼめて、照れ笑いをした。

「でもありがとう。嬉しい。いくらだった?」
「いりませんよーお見舞いですから」
「でも、、、こんなにたくさん」
「本当に。香坂さんのご自宅に上げてもらえただけで嬉しいです」
「あ、、、そか、、、」

亮太郎以外で男の人がこの部屋に入るのは優依頼だなっと思うとまた少し悲しくなってしまった。
その表情を見逃さなかった八木君も眉を少し下げ、なんだか悲しそうに見えた。

「すみません。やっぱり迷惑でしたよね。おれ、帰ります。香坂さんの顔も見れたし」

「顔」と言われ、はたと気が付く。

もしかしてもしかすると、私お高いシートマスクはがしてないのでは?
そっと頬に手をやると冷たい感触が指先に届く。
やはり顔にはお高いシートマスクがまだ貼りついたままだったのだ。

「いやあああああ!」
くるりを背を向け、」しゃがみこんだ。
そして慌ててシートマスクをはがして握りしめた。


八木君は慌てて優子の前に膝をつき、両腕を掴んで支えた。
「どしたの!?大丈夫!?」
私はシートマスクをぎゅっと握りしめたまま、近付いた八木君の顔を見た。

「見た?」
「え?」
「これ。このシートマスクしてたの、、、見たよね?」
その顔は耳まで真っ赤だった。

「なんだ、もう~、、、ふっ」

八木君はふっと笑い、そのまま両膝を床に付けて座った。
私の右肩のすぐ横に八木君の胸があった。
そっと横を見ると、八木君のじっと見つめる目とかすかな微笑みは妙に色っぽくて私はドキッとしてしまった。

「見てないよ」
と優しく言われ、
「ほんとに?」
と聞き返す。

「うん。見たけど、見てない」
「どっちじゃ!」

つい田舎の方言が出てしまって口を押えた。
八木は優しい目をしたまま優子の髪にそっと触れる。
優子の心臓はまたドキッと大きな音を立ていた。

「髪、濡れてる」
「あ、さっき、シャワー浴びたから」
「、、、、乾かさないと」
「あ、う、うん、、、」
私は立ち上がり洗面所に向かった。振り返り、テレビを指さしながら
「八木君、テレビでも見てて」
と言うと、
「香坂さん、タオルとドライヤー、こっちに持ってきてもらっていいですか?」
と返された。

なんに使うのだろうと不思議に思いつつ、素直に持っていくと、テレビの前に座らされた。

八木はきょろきょろしてすぐにコンセントを見つけプラグをさした。
私の後ろのソファに座った八木君に手首をひかれ、八木君の前に座らされた。
そして、タオルで頭をゴシゴシされる。

「○×△□※○~!?」
優子は声にならない声を上げ、八木はにこにこと頭を拭いている。

「自、自、自分でできるよ」
「嫌ですか?」
「いや、、、では、、ないけど、、、」
「なら、じっとしててください。こんな時は甘えるんです」
「ええええ!そうなの?」
「そうです」
「本当に?」
「本当です。ほらちゃんと前向いて」
「は、、、はあ、、、」

ドライヤーで乾かされている間、八木君の足の間に優子は正座していた。
少しでも動こうものなら触れてしまうという焦りと緊張で固まってる。
八木君はそっとそっと優しく髪を持ち、時折「熱くないですか?」と聞きながら乾かしいる。

「香坂さん、カッチンコッチンになってますよ。リラックスしてくだ、、、あ。」
「カッチンコッチン、、、」
「「アイス!!!」」
二人はテーブルに置かれたままの買い物袋に駆け寄った。

「よかったあ、大丈夫そう。柔らかくなってむしろちょうど食べごろって感じ!」
アイスはカップにはいってて、抹茶とチョコの2つが入っていた。
「一緒に食べよっか。でもその前に他の物を冷蔵庫に入れちゃうね」


優子は抹茶、八木はチョコのアイスを食べた。
少し柔らかくなりすぎていたけど、甘くて冷たくてふたりで「おいしい」といいながら食べた。

八木君が
「抹茶味もちょっと食べたいです」
というのでカップを差し出した。
それを掬って「おいしい」と食べた。

「おかえし」
八木君は自分の食べているスプーンでアイスを掬って私の口元に運んだ。

ものすごくドキドキしたけど、平静を装ってそれを食べた。


八木は明るくて、元気で、子犬のようなイメージが定着しているのに、今日はいつもと違った。
そこはかとなく、、、いや、完全に色気が駄々洩れしている。

これって絶対やばい奴だよね?あ!!もしかしていつぞやいってた「狼」バージョン!?

などと考えていると、目が合って、、、そっと片手で抱きしめられた。
「ちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょ、待って!」
と八木君の胸を押して体を離した。

「待ちたくない」
「いやいや、これ、狼バージョンだよね」
「?」
「子犬じゃなくて狼になるかもって言ってたの」
「ああ~」
八木は思い出したらしくポンっと胸の前で手を叩く。

「でも、俺は香坂さんのドーベルマンのつもりですよ」
「ドーベルマンは襲わない」
「襲うって、、、」
八木君は躊躇したようで、優子の背中から方に移った手を離した。

「俺、香坂さんが好きです。
新人研修で初めて会った時から気になってて。
一緒に仕事するようになってどんどん好きになっていって。
口田課長と付き合ってるって思ってたのが違ってて。
そしたら、もう、好きな気持ちが止まりません」
「、、、八木君、、、」

「今、香坂さん落ち込ん出るってわかってます。
昔のこと忘れられなくて苦しんでるって分かってて来ました。
ほっとけなくて。大好きで」
じっと見つめる八木君の瞳から目が離せない。
体もピクリとも動けない。
息の仕方を忘れたかのようで、胸がぎゅっと締め付けられて苦しくなってしまう。


「俺にしませんか?」
「え?」
「俺にすがってみませんか?」


二人の間に沈黙が流れる。


「私、今流されてるだけかもしれない。
昔にとらわれて、苦しくて、逃げ出したいだけかもしれない」

私の目からは涙が溢れていた。
八木君は親指で涙を拭った。

「俺に流されて。利用して。、、、俺のところににげて、、」

八木君はそのまま私の頬を両手で包み込み、頬を流れる涙を唇で掬った。

目、頬、顎、、、目、、、そして唇。

八木君のキスはそっと触れるだけで、優しかった。

何度も何度も向きを変え、キスをした。
八木君は私の頭と背中をいたわるように抱き、そっと絨毯に倒した。

私を見つめる八木の真剣な眼差しをじっと見つめ返した。
私はそっと八木の頬に触れた。
それを合図に深いキスが始まり、どんどん深くなっていった。





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