酒飲み女子がどきどきさせられてます
「あの日、僕が香坂さんの家に行くことを許したんですか?」
3人での食事が始まって少しした頃、八木が訪ねてきた。

「ああ。医務室で俺に殴りかかってきたから」
ぎょっとした八木は深々と頭を下げた。

「その節は本当に申し訳なかったと反省しております」
その様子を見て、俺はにやりと笑う。
「俺、こう見えて人事課長だよ?とばせちゃうんだよ?わかってるでしょ?
本気で優子のことが心配だったからとってしまった行動でしょ?
まあ、後先考えずに行動するのはどうかと思うけどね」
「すみません。でも、おかげでこうして付き合えるようになったので、それはそれでよかったのかなと

愛想よく笑いながら、俺にワインを継いでくる。
この笑顔が「人たらし」と俺に思わせるゆえんなのだろう。



「おい、八木。優子は俺のかわいいかわいい妹だ。泣かせるなよ」
「はい。もちろんです」
「ちょっと、亮太郎。恥ずかしいこと言わないでよ。私ももういい大人なんだから」
八木の横でにこにこと笑っている優子を見て、優子と俺の関係を八木に伝える。

「ちっちゃい時の優子はそりゃもう、かわいかったぞー。
俺たちの父親同士が兄弟で。家は車で30分蔵離れてたんだけど、田んぼの仕事とか畑仕事を一緒にする機会が多くてさ。家族みんながしょっちゅう一緒にいたんだ。
忙しい時には優子に哺乳瓶を飲ませたりもしてたし。お風呂も俺と入って洗ってやってたし。絵本も読んでやったし、靴ひもの結び方を教えたのも俺だったな。
ほんっとにかわいかったんだよー」
「一緒にお風呂、、、ですか」
「いいだろ?」
「これから、、、、、」
「ふざけんな」
「はっ!」

一緒にお風呂はまだなのか、、、などと最低なことを思いつつ、とっておきの情報を与えることにする。

「いいことを教えてやろう」
「なんですか?」

「優子は尻にほくろが並んで2つあるんだ。実は俺もある」

「ちょっと!!何言ってんの?!最低ー!!」
優子は顔を赤くした。
「さっきから亮太郎、お父さんみたい!」

「せめてお兄ちゃんと言ってくれ。
でな、俺たちの家はすんごい田舎でさ。同級生2人ってくらいの田舎。
だから、赤ちゃんが生まれると村中でお祝いすんの」
俺は田舎の様子を思い出しながら、ゆっくりと優子がどれだけ大切に育てられてきたかを話す。

「優子はみんなから可愛がれてたよ。
赤ちゃんのころから愛想がよかったらしくて。誰が抱っこしても泣かないで笑うわけ。
そんなんだから村中のじいさんばあさん連中のアイドルさ。
俺はみんなから『お兄ちゃんなんだから守ってやれ』って言われ続けてた。
気が付いたら守るのが俺の役目だと思ってた。
まあ、やってることはただのお世話係でいいように使われてたんだけどさ」

八木は俺の目をじっと見つめて話を聞いていた。

「これからは、俺が守ります」
八木はしっかりとした口調で話した。

「いやいや、守ってもらう気ないからね」
間髪入れずに優子が言ってくる。
「えー。守らせてほしいんだけど」
「守ってもらうほど子供じゃないし、しっかりと自立してます」
二人でやいうやいと話す様子に俺はホッとしていた。



「こうやって座って近くで見てると、お二人ともよく似てますよね」
と八木がをれ達の顔を交互に観察しながら言ってくる。

俺たちは爺さんにだとよく言われていた。
薄い唇の形はがよく似ている。
俺は眼鏡をかけているので気が付かれにくいが、近くで見ると瞳の色がそっくりだ。
少し釣り目のくっきり二重に黒目のおおきな瞳。ふさふさの長い睫。

「似てるでしょ?よく言われるの」
「うん。美男美女」

「そういえば、優子の鼻が高くなったのは俺のおかげだぞ」
「?」
「優子は鼻が低かったんだよ。だから赤ちゃんの頃から暇さえあればこうやって鼻を摘まんでた」
俺は自分の鼻を摘まんで見せた。

「そんなことで高くなるわけないじゃない!」
「いやいや、コレ本当なんだって」






きゃいきゃい言い合う二人はとても仲が良く、八木はちょっと焼けてくる。
そして八木はだんだん瞼が重くなってきているようだった。
ついにテーブルに突っ伏して眠ってしまった。

酔いつぶれる前に一言。
「、、、もう1つ、、、似てるところ、、、この従兄妹、、、ザル、、、だ、、」
と八木はつぶやき、眠りに落ちていった。




< 23 / 27 >

この作品をシェア

pagetop