酒飲み女子がどきどきさせられてます
「いつ見ても美男美女~」
「お似合い~」

二人で飲んで食べて話していると、声が聞こえた。
座敷の八木君たちと一緒に飲んでいる女の子たちだろう。


「聞こえた?美男美女だって」
とにやりと笑うと、
「よう見ると似てる顔なんじゃけどな」
「いやいや、亮太郎はじいちゃん似じゃん。私はお母さん似じゃろ?」
「目だけな。基本のパーツはおばちゃんじゃなくて、じいちゃんじゃろ」
「あんなにやかましくない」
「顔の話じゃないんかい」





優子と亮太郎は従兄妹だ。

優子はものすごい田舎に住んでいたのだが、亮太郎の家は優子の家から更に車で30分の山奥にある。
山奥すぎて学校に通えないからと、小学生の頃から平日は優子の家に居候していた。
優子が高校生になると亮太郎は大学進学で上京していった。
そして高校を卒業した優子は亮太郎と同じ大学に当たり前のように進学した。

お互いいい大人なのだからいい加減に「従兄妹離れ」をしてほしいとも思うが、子供の頃から兄妹のように育ってきたのだから、今更離れるのもわざとらしい。

互いに互いがいない生活が考えられないほど二人はそばにいた。

でも、それは周りの人たちが言うような「彼氏彼女」ではないのだが、、、。



そんなことを考えていたら熱燗の徳利が2つ出てきた。

「熱いから気を付けてくださいねー」
と注意されていたのだが、先程迄のぬる燗の気分で徳利を持ってしまった。

「あつっ」
慌てて手を放し、その熱さに驚目を丸くした。

「大丈夫?!」
亮太郎は優子の手を持ち、火傷がないか確認して優子の顔を見た。

優子は目を見開いたまま固まって、熱かったアピールをしてみせた。

「ははっ変な顔!」
「失礼なっ!」

ここからは徳利を持つのは亮太郎の役目になり、この日優子が徳利を持つことはなかった。

過保護だ。


そんな二人の様子は、座敷から見ている同期君や八木たちの集団からは恋人同士がイチャイチャしているようにしか見えないのだった。

そして八木が小さく唇をかんだことも、八木がじっとこちらを見ていることも優子は気づかないのだった。
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