ズルい男に愛されたら、契約結婚が始まりました


佳奈は私にいて欲しいと言うので、ふたりで手をぎゅっと繋いだまま告知を聞いたのだ。

すぐに入院して手術することが決まり、姉は慌てて恋人に連絡をした。
だが何度連絡しても電話は不通で、メッセージも送れない。
佳奈の愛する人とは、音信不通になってしまったのだ。

突然の病魔で苦しい闘病生活が始まったのに、恋人はそばにいてくれない。
手術の前後も、抗がん剤治療で苦しいんでいる時も、白石航大の声すら聞けないのだ。

『祥太を連れて三人でドライブに行く約束してたのに』

佳奈は『子どもと自分は捨てられた』と病院でずっと泣いていた。
祥太は白石航大からものすごく可愛がられていたが、息子として正式に認知されていなかった。
『この子の将来を思うと胸が張り裂けそうだ』と言って、佳奈はまた泣いた。

その姿をそばで見ている私も悲しかったし苦しかった。
祥太を預かっているが、それ以外は佳奈のためになにも出来ないのが辛かった。

そんな時、いきなり白石友哉が姿を現したのだ。



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