ズルい男に愛されたら、契約結婚が始まりました
「そういえば、航大も苦手だったな」
友哉のしんみりとした口調から、どれだけ彼が航大と親しかったのか想像できた。
「いい関係だったんですね、航大さんと」
「ああ。唯一の友で、誰より親しい身内だった」
「そうですか」
ブラックコーヒーよりも苦いものを飲み込んだような友哉の表情は痛々しかった。
「君とお姉さんだってそうだろう?」
「はい。自分の半分がいなくなってしまったので」
「お互い、時間が経ってもダメだな」
友哉の言葉に、瑠佳は頷くことしかできなかった。
それからは、祥太がパクパク食べる様子を眺めながら、静かに食事をした。
そのうちにお腹がいっぱいになったのか祥太の頭がグラグラし始めた。
「ああ、楽しくてはしゃぎすぎちゃったのね」
友哉には驚きだったのか、目を見はっている。
「子どもは食べながら眠れるのか?」
その表情がおかしくて、瑠佳はクスリと笑ってしまった。
「最近はそうでもありませんが、もっと小さい頃は大変でした」
瑠佳は立ち上がると、祥太をそっとイスから抱き上げた。
「三十分ぐらい、お昼寝させてもよろしいですか?」
「構わないが、寝室に連れて行くか?」
「いえ、側についていますから、そこのソファーで大丈夫です」
大きなソファーだから、祥太が落ちる心配はなさそうだ。
寝かせた上に祥太のジャケットをかけ、用意してきたブランケット代わりの大判のストールですっぽりと覆う。
「じゃあ、落ちないように俺が見ていよう」
「ありがとうございます。では、私はお台所を片付けますね」
「そんなことは管理人にまかせればいい」
「いえ、使ったものはキチンと片付けますので」
友哉に祥太をまかせてから、瑠佳はキッチンで洗い物をした。