ズルい男に愛されたら、契約結婚が始まりました
航大の葬儀のあと、友哉はカイロ支社へは戻らなかった。
父である白石商事副社長の和臣の許可を得て、内密に彼が言い遺した『子ども』を探したのだ。
亡くなった航大の両親には、この話を伝えなかった。
なんとか聞き取れただけの不確かな情報だったし、期待させておいて見つからなかったら申し訳ない。
おまけに財産狙いの狂言だったら白石家にとって重大なスキャンダルとなる。
これは慎重に運ばなければならない案件なのだ。
『航大の子ども』については友哉と友哉の父、そして航大と友哉の共通の友人で白石商事の顧問弁護士のひとり三上仁だけの最高機密となった。
子どもの居場所はすぐにわかると思っていたのだが、簡単には進まなかった。
航大には結婚を前提に付き合っていた女性も、恋人もいないと周囲の者が証言したのだ。
三上が航大の友人のひとりひとりに尋ねても、親密な女性の気配はなかった。