一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない
14章:過去①(鷹也side)
彼女は俺と初めて会ったのがローマでだと思っていたけど、日本での彼女の行動範囲と自分の行動範囲は意外に近くて、それまでも何度か見かけたことがあったし……
―――自分自身も一度、大事な場面で助けてもらったことがある。
大学の研究室での研究が佳境に入り、毎日ほぼ徹夜の日々。朝なのか昼なのか夜なのかも曖昧だった。
実験室の中には携帯を持ち込めなかったので、気付いたのは着信からだいぶ時間が過ぎた夕方。
留守番電話を再生して、用件を聞く。
電話を受けた場所と時間、タイミングもすべてが悪かった。
場所は大学の西門。
しかも、すぐそこの駅でちょうど電車が止まったところらしく、タクシーを手配しようとしても、やはりすぐは無理だと言われた。
研究で寝不足もたたっている。
すぐに行かなければならないのに、頭が回らなかった。
(頑張ってももう間に合わないかもしれないし……)
それに少し怖くもあった。
『その場』に立ち会うのが……。
「あの……」
その時、突然、制服姿の女の子に声をかけられた。
見てみると、どこかで見たことある女子高生だった。
―――この子、確か……。