second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
【Okuno special side:last love secret room】
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「本当ですか?お腹にいる赤ちゃんの心臓に病気があるって・・・」
屋上で寺川部長、橘クンとで話をしたあの時から1週間後。
あたしは橘クンに胎児心エコー検査をしてもらった今田さんの外来診察を行っていた。
『超音波検査しか行っていないので、絶対に病気があるとは言えませんが・・・』
「・・・・・・・・」
橘クンに検査をしてもらった時嬉しそうに応対してくれていた今田さんとは別人かのような無表情な彼女。
信じられないんだと思う
想像していなかったことを告げられているのだから
彼女のそんな様子を目の当たりにして想い出すことがある
日詠クンの奥様である伶菜ちゃん
彼女の長男である祐希クンも胎児心エコーで同じように非常に難しい先天性心疾患が見つかった
それを見つけて、それを伶菜ちゃんに告知したのは
当時、彼女の主治医であった日詠クンだった
あたしもその頃、南桜病院で勤務し、日詠クンのフォローをしていたけれど、胎児心エコーで見つかった先天性心疾患を告知する難しさを彼のすぐ傍で見ていた
それが難しいことは頭でわかってはいたけれど、こんなにも重いことなんて思ってはいなかった
「何かの間違いですよね?」
『・・・・どんな状況になっても最善を尽くせるように準備します。』
「嘘・・・・」
たった今、今後の方針を説明しても、今田さんの頭が追い付かない
・・・そう思った
まずは、彼女自身が胎児に先天性心疾患があるかもしれないということを受け止める時間が必要
そして、いろいろな人たちの手助けを受けながらこれからのことを進めるべき
・・・そうも思った
『すごく心配な気持ちになったとは思いますが、今田さんはこれまで通りの生活を変えることなく、出産日まで過ごして頂いても大丈夫です。』
「・・・出産日まで・・・このまま・・・?」
『はい。1週間後、できればご家族と一緒に外来にお越し頂きたいと思います。そこで今後の方針について、詳しくご説明させて頂きたいと思います。』
今田さんは今にも涙を流しそうな目でこくりと頷き診察室を後にした。
産婦人科医師として様々な妊婦さんに出逢ってきた
今田さんと同様に出生前診断にて胎児に難しい病気を見つけた場合、その多くがそれに対応できる専門的な病院に転院を勧めることがこの病院の産婦人科医師の役割だった
でも、これからは先天性心疾患についてはそうじゃなくなる
あたしがそれをちゃんと受け止め、妊娠から分娩までの母子のココロとカラダを守り切って、新生児をうちの小児科医師へ橋渡しをする役割を果たさなければならない
『難しい・・・ココロもカラダも守るのって本当に難しい・・・』
『でもやらなきゃいけない・・・』
『何からやったらいいんだろう・・・・?』
これまでは先輩産婦人科医師の下で、自分のできることをやってこれば良かった
でも、周産期センター産婦人科部門長に就任する予定の自分が今度は周囲を率いていかなければならない
『こんなプレッシャー・・・どうしたらいいんだろう?』
「どうもしなくてもいいのでは?・・・ひとりでは・・・」
『・・・橘クン・・・』