second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
【Okuno side 6 :嬉しい知らせは共有できない?】


【Okuno side 6 :嬉しい知らせは共有できない?】


『ブッシュドノエル、全部食べちゃった・・・美味しすぎて・・・』


クリスマスイヴの夜11時。
ERを受診した妊婦さんに解熱剤を処方した後はドクターコールされることがなく、その後、足を運んだ産婦人科病棟も落ち着いていた。
そのため、特にやることがなかったあたしは明日食べるはずだったブッシュドノエルを完食してしまった。

そんな美味しいブッシュドノエルを作ってくれたであろう人・・橘クンにお礼を言うべき。
さっきは勢いで小児科ドクタールームに彼を捜しに行けたのに、少し時間が経ったこともあってか、屋上での彼とのやりとりを想い返してしまうと足がすくんでしまう。
どんな顔してお礼を言えばいいのかわからないから。


『どうせまた、新生児の引継ぎで顔を合わせるだろうから、その時にお礼を言えばいいか・・・』


自分にそう言い聞かせながら、いつものように仮眠室で布団を被って目を閉じた。

でも、キスされた唇の感触、そして頭の中を俺でいっぱいにしてという橘クンの捨て台詞があたしの神経をなかなか鎮めてはくれなくて、

『・・・あ~、も~、眠れない!!!!』

何度も何度も寝返りを打っていると、プライベート用のスマホがブルブルと揺れた。


『・・・LINE?誰だろ、こんな時間に・・・』

眠れないついでにスマホのロック画面を解除し、LINEを確認する。

『森村・・?・・・南桜の森村クン?!』


まさかの人からのLINEに驚いた。
名古屋南桜総合病院の整形外科部長である森村クン。
あたしが南桜病院から今いる城北病院へ異動する際に、無理矢理に近い形でLINEのおともだちにされていたのを忘れていた。


《今日はめでたい!次は奥野さんだなっ!》

『なに、コレ・・・動画見ろってこと?』


メッセージの下に映し出された動画らしきもの。
それを再生すると、その動画には
見覚えのある景色と、見ているこっちが幸せになるようなふたりと彼らを見守るお馴染みの人たちが映っていた。


『こんな日が来るなんて、森村クンが言う通り、本当におめでたい!! 元気になってくれて良かった・・・本当に嬉しい・・・』


伶菜ちゃんと陽菜ちゃん、そして日詠クン
彼女らの大変だった時期に寄り添う努力をしたひとりの医師として、また、彼女らを大切に想い続けてきたひとりの人間として、自然と嬉しい涙が流れた。

さっきまで橘クンとのやりとりのせいで目が冴えて眠れなかったあたしなのに、嬉し涙に癒されたのか、布団の中でスマホを握ったまま眠っていた。


その後も、自分が勤務中、NICUへ引き渡さなくてはいけないような新生児の分娩のない日々が続いたせいもあってか、橘クンと顔を合わせる機会がなく、気がつけば大晦日の夜になっていた。



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