鬼弁護士は私を甘やかして離さない

後ろ向きな自分

大学に入学し、しばらくしてグループができた。
私は鳥取から上京してきて、誰も知らない大学生活が始まり不安に押しつぶされそうだった。
そんな時、たまたま隣に座っていた美沙が声をかけてくれた。
美沙は東京出身だが、特に同じ大学に友達はおらず私と同じだと教えてくれ少し心強く思った。

話せば話すほどに意気投合し、美沙と同じサークルに入った。
どのサークルに入ろうか悩んだが、アウトドアサークルというものに入ろうと誘われるがままに入会した。

アウトドアと言ってもその季節ごとに遊びに行こうといったもので登山してみたり、魚釣りしてみたり、海に行ったり、といった感じ。もちろん強制ではなく参加したい企画があれば行こうかな、といった程度のこと。
上京してきた私はバイトもあり毎回参加とまではいかなさそうだったので、この緩さを気に入った。

同級生も数人入会してきて、私たちと同じ法学部だという数人の男子もいた。

まだ接点もなく、どことなく話しかけにくいそのメンバーに一歩引き気味でいた。
すると後から遅れて1人やってきた爽やか印象の彼が九重斗真だった。

「ごめん、遅くなった。あれー?君らも1年?よろしく。俺、九重斗真。斗真って呼んで」

「よ、よろしくお願いします。法学部の小林真衣です」

「武田美沙です」

「真衣ちゃんと美沙ちゃんね。俺らも法学部だからこれからよろしく」

なんだか明るく挨拶をされ、一気に場の雰囲気が和んだ。

50人弱のサークルだったが集まっても20人くらいという希望での活動が主だった。

私もバイトの合間で美沙と時折参加しては同級生たちと仲良くなっていった。

初対面で話しかけにくかった彼らも、後から聞けば緊張で話しかけられなかったと分かり今ではかなり打ち解けている。それもこれも斗真が間に入り円滑にコミュニケーションを取ってくれるからだ。
彼の絶妙なパスでみんなの会話が弾み、話しやすくなった。

「真衣は何のバイトしてるの?」

「塾講師だよ。小学生教えてるの」

「へぇ。子供好きなの?」

「そうだね。可愛いし、好きかな。斗真はなんのバイト?」

「ガソリンスタンド。本当は居酒屋とかやりたいけど遅いと眠くなるからさ」
 
「お子ちゃまなのね、斗真は。先生がお勉強見てあげますよ」

そういうと斗真は苦笑いを浮かべ、みんなで笑い合った。
私たちはお互い気を許した友人として親交を深めていった。
サークルとは別でグループで飲みに行ったり、プールに行ったり、バーベキューをしたりと合間を見つけては楽しむこともあったし、斗真とは図書館に行くことも多かった。

自然と周りからの目を引く斗真に私も惹かれていった。
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