俺の気持ちに気づけよ、バ~カ!

桜牙side




☆桜牙サイド☆


すっかり日も暮れ
街中のイルミネーションが輝く
夜7時。

カップルでにぎわう
商店街。

いつもよりゆっくり歩く
俺の隣には、

左手を月明かりに照らし
ニンマリ笑顔の璃奈の姿。


「指輪ばっか見てると
 転ぶぞ」

「だって綺麗なんだもん。
 嬉しいんだもん」


璃奈の弾んだ声に

――俺とお揃いの指輪が
  そんなに嬉しいのかよ?

  ほんと可愛い。

  くそ可愛い。

  俺が萌え死ぬわ。


なんて
俺の頬が緩んでしまう
わけなんだが……

寂しいのは、俺の右手で。

璃奈の左手を握れるほどの
至近距離を陣取っているのに

璃奈が目を輝かせて、
自分の指にはまるリングを
見つめ続けているから

握ろうにも握れない。

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