8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
エピローグ
 アラスター国王が、求心力が弱まったと自分で感じるようになったのは、国を縦断する幹線道路が開通し、フィオナとジャネットが共同で作ったという紐編みのアクセサリーが評判になった頃だ。

 交通網が整備されたことで、いろいろな情報が一気に伝わってくる。それを活用しようと各大臣が力を入れはじめ、その施策に積極的なオスニエルの発言力が強まってきたのだ。

 彼は、妻がひとりであるゆえに、後宮にかかる経費は、アラスターの六分の一。まして、経済をまわすことに長けた正妃だ。平民からの人気も高く、次第にオスニエル夫妻を国政にと望む声も高くなってくる。

 時代の終わりを感じた国王は、オスニエル三十一歳の春に退位することを決めた。
 退位後は、ボーン帝国の名跡の残された都市・リースバルに館を建て、そこに移ることとなる。まだ成人にならない幼い王子や姫の母親は城に残るが、成人した第二王子ライリーの母親である第二夫人は実家に戻り、イザベラ正妃は国王についていくこととなる。

「お義母様も行ってしまうのですか?」

 フィオナは後宮で、王妃とお茶を飲んでいた。王妃が城を去ると聞いて、最初に去来したのは寂しさだ。フィオナはまだまだ、彼女に教えてほしいことがたくさんあった。

「ほとんどの后が、人質として輿入れしたようなものだもの。あの方のもとに残る人間なんて、私しかいないでしょうし。長年連れ添ってきた情はありますからね」

 彼女はツンと澄ましてそう言う。こういった情を捨てきれないところが、オスニエルの母親にあることが、フィオナはうれしかった。

「私、まだまだお義母様に教えていただかなければならないことがたくさんありますのに」
「あなたなら大丈夫よ。それに、私たちの時代と今はもう違うでしょう。貴方とオスニエルが正しいと思う道を選んでいけばいいわ。大事なことは、諫めてくれる家臣を大事にすることよ。自分の意見と違うものを排除し続けていくと、ひとつの考えしか通らない空っぽの国になっていくわ。反面教師にするといいわよ」
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