偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
怒った女性と白衣の集団は奥の診察室へと消えて行った。

5分。

10分。

ただ待っている私には長い時間。
それでも、敬が帰ってくれば2人で出かける。
ドライブをして、美味しいピザを食べて、海岸を散歩する。
想像しただけで、ウキウキしていたのに、

15分。

20分。

敬は出てこない。

さっきまでザワザワしていた待合はいつのも落ち着きを取り戻し、診察室からは患者さんを呼ぶアナウンス。
きっと、敬ももうすぐ出てくるだろうと思っていた。
それなのに、

「花見先生、ちょっと待って」

駆け出してきた女医さんを追ってきた敬が、声をかけ腕をつかんで止める。
遠目からでもわかるくらい女医さんの目は真っ赤になっていて、今にも泣きだしそう。

あれ?

一言、二言。
敬が話しかけると、女医さんの顔が変わった。

さっきまで涙がこぼれそうな表情だったのに、目に生気が戻り、口元もキュッと引き締まった。
そして、険しい顔をしていたはずの敬が少しだけ笑ったように見えた。

ポンポン。
敬が女医さんの肩を叩き、2人は診察室に戻って行った。
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