偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「どうしたんだい?」
いつものように穏やかな様子で、歩み寄るおじさん。

お母さんは目を吊り上げて私を睨んでいる。

おじさんとお母さんが結婚してから10年になる。
それまで私とお母さんは2人暮らしだった。
食べる物に困るほどの貧乏はしたことがないけれど、気まぐれなお母さんには振り回されてばかり。
とにかくいつでも自分のやりたいことが一番だし、私のことは常に後回しで数日間家に取り残されることも珍しくはなかった。
もちろん最低限の食事とお金は与えられていたから、私自身不満を感じることもなく世の中のお家はみんなそんなものだと思っていた

「行ってきます」
私はスリッパから靴に履き替える。

「真理愛ちゃん、今日もお父さんのところに行くのかい?」
おじさんもやめておきなさいって言いたいみたい。

でも、私はやめない。
お父さんのお見舞いに行くのを泊められる理由はないはずだから。

「真理愛ッ」
後ろから近付いてきたお母さんに腕をつかまれ、
「離してっ」
私は思いきり振り払いお母さんを睨んだ。

おじさんの前でここまでの言い合いはしたことがない。
いつもなら私の方が引いて収まるのに、今日はそんな気にならなかった。
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