偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「それでもお前は敬を選ぶのか?」
「そんなこと、」
しない。

敬に頼ったり、重荷になるのは嫌。
どんなに貧乏をしたって、私は自分足で生きていきたい。

「高城の跡取りとして贅沢させてもらっている俺が言えるセリフじゃないが、平凡が一番だぞ。医者の嫁なんて金があるって言うだけで世間の目はうるさいし気の休まる時がないはずだ」
「だから、私と敬はそんなんじゃないって」

敬の素性を知らされる前から敬のもとに行くつもりは無かった。
私が側にいることで、敬に負担がかかるのが嫌だった。

「お前が本気で一人暮らしをしたいのなら力を貸そうか?」
「えっ」

驚いた。まさかお兄ちゃんがそんなことを言うとは思わなかった。
でも、いいチャンスかもしれない。
入院中のお父さんだっていつまでも病院にはいられない。近いうちに退院の話が出てどこかの施設に入所するしかないと思う。お父さんはこの街から離れたいと言っているし、私も一緒に引っ越してしまうのもいいかもしれない。

「お兄ちゃん、おじさんとお母さんを説得できるの?」
「ああ、まかせろ」

すべては私のわがまま。
今まで育ててもらった恩も返さずにひどい娘だと思うけれど、私は決心した。

「お兄ちゃんお願い、私家を出たいの」
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