偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「真理愛は街を出るのか?」
「うん。お父さんがこの土地を離れたいって言うから」
「知らない土地での生活は楽じゃないぞ」
「覚悟している。でも、自分で決めたことだから」

真理愛の引っ越し先はここから車で1時間ほどの県境をまたいだ隣町。
そう遠い場所ではないが、初めての一人暮らしはきっと心細いはずだ。

「何かあれば連絡して来い」
「うん」

意地っ張りの真理愛のことだから、きっと連絡なんてしないんだろうな。
それでも、何かあれば頼って来いと念を押した。


「ねえ敬」
何か言いたそうな顔をした真理愛が俺を見つめている。

「どうした?」
「あのね、」
「うん」
「もう一度、」
「え?」

顔を真っ赤にして言葉に詰まった真理愛を見て言いたいことがわかってしまった。

「いいのか?」
「うん。・・・抱いて」

俺と隣まで歩み寄り、肩に手をかけた真理愛。
俺はゆっくりと真理愛を抱き寄せた。
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