偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
1ヵ月後。

「お世話になりました」
おじさんとお母さんに挨拶して玄関を出る。

高城家で10年。
人生の半分の時間をここで過ごした。
あんなに大切にしてもらったのに最後まで打ち解けることのできないかわいげのない子だったと思う。
私が連れ子じゃなくておじさんの実子だったら、どれだけ幸せだっただろう。

「真理愛ちゃん、絶対に無理をするんじゃないよ」
普段私に触れることのなかったおじさんが、ギュッとハグしてくれた。

「おじさん・・・」
ごめんなさい。

それでも素直になれない私は、言葉を飲み込んだ。

「真理愛、必ず連絡してね」
「うん」

おじさんとの約束で、おじさんやお母さんからは連絡をしないことになっている。
その代わり、私からは連絡できる。
それがおじさんの条件。
2年間、好きに生きなさいっていうのがおじさんの考え。

「今まででありがとうございました」
もう一度振り返って、深く、深く頭を下げ高城邸を後にした。
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