偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
結局、敬也は怒って庭へ出て行った。

「太一お兄ちゃんと仲よく遊ぶのよ」
一応走って行く背中に声をかけはしたけれど、当然返事は聞こえてこなかった。

「敬也の反抗期もなかなかね」
パジャマのまま台所に顔を出した環さんが笑っている。

「笑い事じゃないですよ。誰に似たんだか頑固で」
「フフフ、きっと敬ね」
「はい」

私の旦那さんであり敬也のパパである敬は腕のいい救命医。
穏やかな語り口と丁寧な診療は患者さんの間でも評判がいいらしい。
ただ、私の前ではちょっと頑固な亭主関白。
敬也と同じように、いったん言い出したら自分を曲げない。

「太一君はいい子ですね。わがまま言わないし」
「そう?あの子結構大胆なことするから油断できないのよ」

環さんと皆川先生のお子さんは太一君、4歳。
とっても穏やかで聞き分けのいい子にしか見えないけれど・・・

「パパが優しくて普段はほとんど怒らないからおとなしい子に見えるけれど、ずる賢く自分の思いを通すところがあるのよ」
「えっと、それはどういう?」

4歳児のずる賢さってよくわからないけれど。
それに、この1ヶ月ほど小鳥遊邸に泊っている太一君を見ていると素直な子にしか見えない。

「着せられた服や靴が気に入らないとわざと汚したり、嫌いな食べ物が出たらわざとテーブルに落としたり」
「へー」

4歳児ってそんなことするのかあ。
敬也には想像できない。

「それも上手にやるからたちが悪いの」
「ふーん」
何か、意外だな。
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