偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「どうせ何も食べていないだろ?」

応接セット側の照明を少し明るくしてテーブルの上にサンドイッチや飲み物を広げる姿。

「どうした?俺の顔忘れたか?」
まったく動こうとしない私に、揶揄うような声。

「バカ、そんなはずないじゃない」
ずっとずっと、忘れたことなんてなかった。

病院の前を通るたびにここを入れば敬さんに会えると思った。
それでも思いとどまったのは、あの時敬さんが言ってくれた「もしまた困ったら、連絡しておいで」と言う言葉。
だから私は頑張れた。

「真理愛?」

ウッ、ウウッ。

名前を呼ばれただけで込み上げる感情の正体ははっきりしない。
恋なのか、ただ単に思い出を美化しているだけなのか、私にもわからない。
でも、

ドンッ。
私は暗闇の中に浮かぶ人影に思い切り飛び込んだ。

暖かくて、たくましくて、懐かしい感覚が、私の記憶を鮮明に呼び覚ます。


「久しぶりだな」
「うん」

ずっと、私はあなたに会いたかった。
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