偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
意識がないとはいえ眠ったままのお父さんを気遣い照明は部屋半分の薄明かり。
お互いの顔とテーブルの上がやっと見える程度の明るさな中、私と敬さんはソファーに並んだ。

「今は大学病院にいるのね」
確かママとの会話でそんなことを言っていた。

「平日は大学病院にいて、週末だけここで勤務している」
「へー」

週末にしかいない敬さんが勤務の時に、たまたまお父さんが運ばれてくるなんてすごい偶然。

「なあ」
「ん?」

敬さんに声をかけられ、私は顔を上げた。
じっと私を見つめる眼差しが、少しだけ険しい。

「もう少し、お母さんに優しくするべきだな」
「え?」
何をいきなり。

「真理愛にも言い分はあるんだろうが、あんな風に人前で言いあえば高城先生が困るだけだろ」
「でも、悪いのは私じゃないわ」

そうよ、悪いのはママの方。なのに、何で私が叱られるのよ。
私はプイと、敬さんから視線をそらす。

「どんな人でも親は親。今優しくしなければ、いつか後悔するぞ」

ボソリとつぶやくように言われる言葉に、言い知れぬ寂しさを感じた。
そうか、敬さんは小さいころ、まだ小学校に上がる前にお母さんを亡くしたんだ。
私、凄く無神経だった。

「・・・ごめん」

後悔で泣きそうになった私に、優しく頭をクシュっつとなでてくれる敬さん。
私はそんな敬さんの肩口に顔を埋めた。

「ずっとずっと、会いたかった」
「うん。俺も」

4年ぶりの再会は、とても暖かくて優しかった。
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