偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「じゃあ、敬さんの家に行ってもいい?」
「え?」

まったく予想してもいなかった言葉に、本気で驚いた。
真理愛がそんなことを言い出すなんて、想像もしていなかった。

「おばさまが作ったお総菜がまた食べたいの」
「あ、ああ」
そう言うことか。

たった一度だけだけれど、うちでおばさんの料理を食べた事のある真理愛は、その味を覚えてくれていたらしい。

「いいよ、明日にでも持ってくる」

明日は休みの予定だから、届けるくらいのことはわけもない。
それで真理愛が元気になるのならお安い御用だ。

「違うの。私は敬さんのうちに行きたいの」
「えっ」

さすがに、それは良くない気がする。
お父さんの付き添いのためにここにいる真理愛を家に連れて行くのは、高城先生に嘘をつくようで後ろめたい。

「あの時、『もしまた困ったら、連絡しておいで』ってい言ってくれたよね?」
「ああ」

4年前。
別れ際にそう言った。
何かあったらおいで。だから、逃げずに現実と向き合え。そんな思いだった。

「じゃあ、行ってもいいでしょ?」

この瞬間勝負はついていた。
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