偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~

言葉にできない存在…敬

日曜の夕方から、真理愛は俺の部屋に帰ってこなくなった。

別に約束をした訳でもなかったし、『お父さんの容態も大分落ち着いたから一旦家に帰るわ』と言うメールを素直に信じた。
真理愛には真理愛の生活があるんだと自分にい聞かせながら、それでも寂しさは隠しようがない。
こんな時、俺の方から『会いたい』と言えるような人間ならよかったのにと思う。
周りの目も自分の不利益も考えずに真理愛のことだけを考えられる人間なら、違う人生があったのかもしれない。
でも、俺にはできないんだ。
人の痛みも悲しみも、抱えている影も心の底に潜む闇も、人並み以上に見えてしまう。
それはきっと、子供の頃から大人の顔色を見て生きてきたからだろう。

思えば、俺はかわいくない子供だった。
まだ十代の前半から一人で生きてきたからか、世間擦れした大人びた子供。
生きていくためにはそうなるしかなかったんだが・・・
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