偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~

言葉にできない存在…真理愛

「待ちなさいっ、真理ァ」
――バンッ。

ママが叫ぶ声と、思い切り玄関ドアを締める音が重なった。

ママが外に出るのを嫌うのを知っているから、喧嘩になるとすぐ外に飛び出してしまう。
これは私の悪いくせ。


「やだ、雨」

玄関から駆け出して門を出たところで、足が止まった。

弱い雨だから、傘なしでも歩くことができないわけじゃない。
短い距離ならそんなに濡れることもないだろう。
何よりも、ママと喧嘩して家を飛び出してしまった以上、傘をとりに戻る選択肢はない。
しかし、

「はー、困ったな」
思わず心の声が漏れた。

敬さんに家に泊っていたことがバレて家に連れ戻されてから10日ほど過ぎた。
毎日夕方には家に帰ってくるようになった私に、おじさんは何も言わない。
しかし、ママの方は私の顔を見ればネチネチと小言を言う。
元はと言えば私が悪いんだからと黙って聞き流してはいるけれど、同じことをくどくど言われればキレてしまうときもある。
と言うわけで、止まらないママの嫌味に耐えかねた私は雨の中家を飛び出してしまった。
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