偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
5分後。

『そういえば、明日お父さんが転院するの』
『そうか、おめでとう』

内科病棟に移って状態も落ち着いていると聞いていたからそろそろ転院とは思っていたが、明日だったか。
まだ完全に治療が終わったわけではないけれど、急性期の患者さんを中心に扱っている県立病院に長期で入院することはできない。
状態が落ち着けば療養型の病院へ移るしかない。

『できれば最後にご挨拶したいんだけれど、敬さん明日は勤務?』
『朝から仕事をしているから病室に顔を出すよ』
『本当?』
『ああ、忙しかったら動けないから必ずではないけれど、行けそうなら行く」
『ありがとう、待ってます」

お父さんが転院すれば、俺が真理愛と会うこともなくなるだろう。
今でもそんなに会えているわけではないが、会う理由が全くなくなってしまう。
だから明日は、できるだけ時間を見つけて会いに行こうと決めていた。
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