追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
皇帝の企みと聖女の覚醒
ダルマストーブにのせられたやかんがシュンシュンと音を立てている。

昼時を過ぎた鶴亀亭で、三角巾にエプロンドレス姿のモニカが張り切っていた。

「ポークカツレツを卵でとじてみたの。味付けはお醤油と砂糖とお出汁よ。かつ丼と名付けるわ」

「めちゃくちゃ旨いよ。モニカはすごいや!」

テーブル席でドニがドンブリ片手に頬を染め、モニカを褒めちぎる。

客足は途切れており、バンジャマンも賄い飯としてモニカの試作品を同じテーブルで食べていた。

「バンジャマンさんはどうですか?」

横に立っていい感想を期待するモニカに、バンジャマンが皺のたくさん入った顔を向けた。

「確かに旨いの。じゃが新メニューにはできん。食材の仕入れにもかかわるからこれ以上メニューを増やせんのじゃ。わしにも限界がある」

ホッホと笑う老爺は箸先を壁に向けた。

そこには既存のメニューに加え、モニカが提案した新メニューがペタペタと貼られていた。

豚汁、ラーメン、餃子、焼き鳥、カレーライス、お好み焼き、巻き寿司に、デザートはイチゴ大福、フルーツパフェ、マカロン、タピオカミルクティーだ。

元は一列だったメニューが二列になっていて客らは珍しがって注文してくれるが、確かにバンジャマンの負担は増えた。

そのことに今気づいたモニカは申し訳なく思う。

「ごめんなさい。私ったら、自分の食べたいものを押し付けていただけだったわ」

モニカがここで初めて料理したのは半月ほど前のこと。

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