もちろん使うのは、先日みどり先生の実家である「読み書き商店」で購入した白いアジサイのメモセットである。

桃子はそこから一枚メモを取り出して、ペンを握った。

《若草君へ

❝さがしもの❞気に入ってもらえたようで良かったです。私はたぬきの親子の章が好きです。あの子たぬきのように在りたいし、いつかあの親たぬきのようになれたらいいなと思っています。今回お貸しする本はファンタジーの要素がある小説です。良かったら読んでみてください。》

そこまで書くと、桃子は一つ深呼吸をしてペンを握り直した。

《さり気ない心遣いありがとうございます。ある日を境に他の生徒から影口を叩かれなくなりました。もしかして若草君のおかげですか?もしそうなら、ありがとうございます。若草君が良ければこれからも引き続き本はお貸しします。リクエストなどあれば教えてください。

山吹より》

「ちょっと文字を書きすぎてしまったな……」

文庫本に挟める程度の小さなメモは、表も裏も桃子の丸く整った文字でいっぱいになってしまった。

「もう少し大きくて可愛いメモ用紙が必要ね」

桃子はそう言いながら、❝夢の案内人❞の表紙を開いて一ページ目にメモは挟んだ。

本を大事に鞄に仕舞うと、両手を伸ばしてストレッチをした。

そのままの勢いでベッドに飛び込むと、ウトウトと眠りについた。