期末試験が終わり、夏休みが訪れようとしていた。

桃子たちにとって、今年は中学生最後の夏休みである。

部活動も引退し、高校受験に向けて舵を切っていく絶好のタイミングだ。

しかし、中学三年生の夏休みは人生で一度きりであるのもまた事実だ。

三年A組だけでなく、あちこちの教室で夏休みに何をするか相談し合う楽し気な声が聞こえてきていた。

友達同士で旅を計画する者、お祭りや花火大会へ行く約束をする者、皆それぞれ夏の太陽に負けないくらいに笑顔が輝いている。

そんな楽し気な雰囲気が漂う昼休み、桃子は神妙な顔をして東棟の図書室にいた。

そこにはお馴染みである司書のみどり先生、そして親友の原田志麻の姿もある。

「ど、どうしたのももちゃん?すごい顔よ?」

みどり先生がそう言うと、隣にいる志麻も頷いた。

「先生、しまちゃん。わたし、相談したいことがあるの」

いつになく切羽詰まった表情の桃子の気迫に押され、先生と志麻はゴクッと唾を飲んだ。

「なにかしら?」
「なに?なんでも言って、桃子」

桃子は二人の顔を交互に見た。

「あのね、わたし……若草君にね……」

そこまで言うと、桃子の言葉は途切れてしまった。

若草淳という名前を聞いて勘違いをした志麻が、「アイツ!桃子に何かしたの!?」といきり立ったが、桃子が「違うの!違うの!」と否定した。

「じゃあ、どうしたの?」

と、みどり先生が優しく尋ねると、桃子は意を決して言った。

「わたし、若草君に、夏祭りに誘われたの……!ねぇ、どうしよう!?」