校門の柵の上で花火見物する貴士と志麻の足元で、桃子と若草は手を繋いだまま夏休みのその先を思っていた。

若草はすでに塾に通うなど、受験勉強の本格化の波は押し寄せている。

桃子が目指している志望校は地元の女子高だが、今のままでは勉強不足が否めない。もっと本腰を入れて勉強をしようと思えば、大好きな読書の時間を削ることになるだろう。

それに、夏休みが明けたら若草も受験勉強が忙しく、本を読む時間が減り、本を介した交換日記もだんだんと自然消滅していってしまうのではないかと桃子は考えた。

考えていたことが表情に出ていたのかもしれない。

「大丈夫?」

と若草に声をかけられて桃子は我に返った。

「すみません……ちょっと考え事をしていました」

「そっか……。あのさ、良ければなんだけど、夏休みが明けても本貸してくれない?山吹さんの選んでくれる本はどれも面白いし、それに……それに、交換日記は楽しいから」

桃子は驚いて若草の顔を見た。まるで今自分が考えて不安に感じていたことを見透かされたような気がしたからである。

そして、ふと桃子は繋いだ手を見た。

大きくてしなやかで、繋いでもらうと安心する手だ。若草君の手だ。

ドキドキする気持ちと、胸が温かくなるような安心感がそこにはある。

もしかしたら、この繋いだ手を介して私の心が若草君に伝わったのかもしれないと桃子は思った。

だから、「はい、もちろんです。夏休みが明けても本の交換日記しましょう」

と言いつつ、伝わったらいいな。伝われ!伝われ!と念じながら、心の中で桃子は「若草君、好きです!大好きです!」と何度も唱えた。