辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2
5.再会
 アハマスを発って丸二日後、セシリオは無事にプランシェの中心街へと到着した。道中では(くだん)の窃盗団に遭遇しないかと気を張りつめていたのだが、出発から到着まで目立った異変も見られなかった。

 プランシェ伯爵領は広大な森林が広がる自然豊かな地域で、主に建築用木材や農産物の生産で有名だ。
 中心街も森林を伐採した跡地に広がっているため、周囲を森に囲まれている。そして、街の至る所に大きな木々が立ち、かつてここが森であった面影を残していた。
 馬車がプランシェ伯爵邸に到着すると鉄柵でできた大きな黒い扉が門の警備をする衛兵により開かれる。そこからまた木々の中の道を馬車で数分進むと、屋敷の馬車寄せへと辿り着く。

 セシリオは馬車から降りると、屋敷を見上げた。白い屋敷は石造りのアハマスの領主館と違って木造なので、独特の温かな(おもむき)がある。
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