離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます

愛される

「……エナ、……シエナ」

　私を呼ぶ声が遠くで聞こえ、ムニッと柔らかい感触がして、口内に水が注がれた。

　喉が乾いていた、私はコクコクッとそれを飲み込んだ。

　生温かい、ユラユラとした心地よさを身体中に感じて、ゆっくりと意識を覚醒させた。

「んん…… 気持ちいい…… 」

「目が覚めたか？　」

　チャプッと音がして、蓮斗さんがお湯を掬って、首元にかけた。

「へ？　」

　ほんのりと、頬を上気させ、髪を上にかき揚げて水を滴らせた、色気全開の蓮斗さんが私の顔を覗き込んでいる。

「ど、ど、どういう状況？！！　」

　目をパチクリさせて、目の前の蓮斗さんと、下を向いて自分の身体を確認する。

「キャ、キャアァァッーッ？！　裸？！　え？　え？！　　どうしてお風呂にいるのーーーー？！　」

　泡風呂になっているが、裸には変わりない。　慌てた私はパニックになって、抱き抱えられていた蓮斗さんから逃げようと、パシャパシャッと、お湯を掻き分けた。

「ぅあ……、み、見ちゃダメです……っ！　」

　身体を丸めて、小さな抵抗をする。

「そんな可愛いらしい抵抗をしても、今更だ。　もう何度も身体を繋げているだろう」

　ククッと目を三日月型に細めて、蓮斗さんはニヨニヨする。
　
「だ、だとしても……、こんな明るい所で見られるなんて、ううっ……、む、無理…… 」

（恥ずかし過ぎて死ぬる……）