和服御曹司で俳優な幼馴染に、絶対溺愛されてます



 ドォンッと、遠くでまるで轟のような花火の音。
 満点の空を色とりどりの光が輝かせる。
 祭囃子に紛れ、打ち上げ花火を見た人々の歓声や拍手、花が散った後のパラパラという音が響いた。
 大暑の夜、むわりと熱気に溢れた夏祭りも終盤を迎えつつある。
 会場である神社から、少しだけ離れた雑木林の木陰。濃緑にところどころ、ツユクサの青やクサフジの紫が顔を覗かせている。
 火薬の匂いから離れた場所では、むせかえる土と甘い花の香りが漂った。

 そうして、茂みの向こう――巨大な大木の下、浴衣姿の男女が身体を重ね、口づけを交わし合う。

「ミサ……綺麗だ……」

「あっ……リュウ……セイっ……」

 樹の幹に押し付けられ、地面にしゃがみこんだ女性ミサが喘いだ。夜風に、彼女の熱っぽい吐息が混ざる。昼に比べて涼しくなったはずなのに、中に着込んだ白い肌襦袢はおろか、淡い珊瑚色の綿紬さえも、汗でしっとりと濡れてしまっていた。
 頭の上で捩じり上げていた黒髪がほつれて、はらりと落ちた髪が頬に貼りつく。カランと瑪瑙の珠簪が落ちていった。
 体の上に跨る美青年の顔を、年の割には幼い顔立ちのミサは潤んだ瞳で見つめる。

「ずっと昔から、ミサとこうしたかった……」
 
 熱を帯びた視線と、色香を孕んだ声音の持ち主はミサの幼馴染であるリュウセイ。
 さらりとした黒髪。バサバサに長い黒睫毛に覆われた、まるで宝石にみたいに艶々と輝く切れ長の黒い瞳。すっと通った鼻筋に、きりっと引き締まった唇。
 長身痩躯、着物の似合う体格をした美青年は、瑠璃色の絞り染めの浴衣を白い角帯で締めた格好をしている。

「んっ……リュウ、ちゃんっ……」

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