婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

レイニーside

「わあ、すごいですね。虹がきれい」

 ローラが目の前の光景を眺めて感嘆の声をあげる。

 岩のてっぺんから勇壮に流れ落ちる滝。水のしぶきが散ったあたりに、太陽の光が反射し描き出された虹が架かっている。池にたまった水は、水路を伝って下流へと流れていく。そこから林の中を巡り、また池へと戻ってくる。
 湧水を利用した清流は避暑で訪れる別荘近くのお気に入りの渓谷を模したものである。

 たまの気晴らしになればと思い、一念発起して造ったものだった。
 自分のこだわりを詰め込んで職人たちと試行錯誤を重ねた会心の秀作だから、興味を持ってくれて嬉しい。

 気晴らしどころか、けっこうな癒しにもなっている。時間があれば散策して自然を満喫するのがストレス解消にもなっているし、使用人たちも憩いの場として利用しているようだから、一石二鳥といったところ。

 珍しそうに瞳を輝かせて滝を見つめるローラ。

「これって、この先はどうなっているんですか?」

 流れ落ちる水を辿って先の景色に視線を巡らせたローラは、興味津々な顔で俺に聞いてくる。

「行ってみるかい?」

「はい」

 一も二もなく返事をしたローラと二人で川下へと歩いていく。
 川の中から水草が顔を出していてほとりにはセリやクレソンも自生している。
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