素直になれない…
side 雄平
「説明しろ」

連れてこられたのは奏多の書斎。
近くの椅子に座れと言われ、俺は腰を下ろした。

「お前が言わないんなら母さんに聞くぞ?」

ったく、こいつは俺の弱点がよくわかっている。
子供の頃から身寄りのなかった俺は、たまたま親しくなった奏多のご両親からの援助を受けながら大学を卒業した。
それは単に金銭的な援助ってことではなく、本当の親のように大事にしてもらった。
高校時代、街の不良と喧嘩をしたときだってわざわざ日本から引き取りに来てくれたし、退学処分にならないように学校と掛け合ってもくれた。もちろん散々叱られたけれど親のいない俺にはうれしかった。
だから、平石のおばさんとおじさんには頭が上がらない。

「藍ちゃんの親父さんってHIRAISIの海外事業部長だろ。母さんの友人らしいし、そんな人怒らせると、父さんが黙ってないぞ」
畳みかけるように脅してくる奏多は、本当に鬼だ。

「とにかく、話してみろよ」
「わかった」

こうなったら隠しておくことはできない。
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