素直になれない…
出会い
私と雄平がなぜこういう関係になったのか。
きっかけは一年前にさかのぼる。

今からちょうど一年前、会社の同僚だった小倉芽衣ちゃんと、副社長の平石奏多さんが結婚した。
一般家庭から財閥に嫁ぐシンデレラ婚って新聞やネットでもかなり騒がれたけれど、本人たちもそれなりに悩みながらのゴールインだった。

住む世界の違いから奏多さんのことを思い黙って去ろうとした芽衣ちゃんに、絶妙なタイミングで妊娠が発覚。
困った芽衣ちゃんから連絡をもらった私は、一晩家に泊めた。
妊娠は2人の責任で奏多さんと芽衣ちゃんが話すべきだと私は思っていたから、誰にも口外するつもりはなかった。
それなのに、母さんが父さんに話し、父さんが奏多さんのお母様である琴子おばさまに知らせてしまった。
黙っていてと言ったのに、話してしまったことに腹が立った私は両親と喧嘩をした。

長期の出張から帰ってきた父さんと口論になり、
「もういい、出て行くっ」
まるで中学生みたいな啖呵を切って家を飛び出した。

持って出たのは携帯と財布だけ。
コンビニにでも行くような格好で飛び出しても行く当てもなく、困った末に会社へと向かった。

今夜一晩だけ会社の仮眠室で眠ろう。
そんな単純な考えだった。
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