エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
ふたりの刺客が想いを突き動かす


予定されている手術に加えて緊急の処置も入り、多忙を極めた二週間があっという間に過ぎていった。
そのせいもあり、雅史とあの夜や院長との話もあれきりしていない。

このままお互いに一夜の火遊びと片づけたほうがいいに決まっている。雅史には製薬会社の令嬢との縁談が控え、楓にも近々その話が父からあるだろうから。

楓がちょうどお昼を食べ終えてお弁当箱を片づけたときだった。テーブルに置いていたスマートフォンが電話の着信を知らせて小さく鳴る。
画面には父、芳郎の名前が表示された。

また退職を催促する電話だろうと、恐々応答をタップして耳にあてる。


「もしもし」
《なんだ、打ち合せ中か?》


小さな声がそう思わせたのか、芳郎が問いかける。そんな気遣いをするのは珍しい。


「ううん、大丈夫」
《今夜、少し時間を取れないか?》


いきなりで面食らう。
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