チューリップの花束を貰った数日後、私はドラマ撮影の現場へと来ていた。
 最近はメディアに顔出しするようになったおかげで少しずつ顔を覚えられてきており、共演者の方にも話しかけて頂くことが増えていた。

 とは言っても映画の撮影に参加すことは数年ぶり。しかも今回はエキストラでなく、主演への抜擢である。プレッシャーは尋常ではなく、現場に来る前から心臓は早鐘を打っていた。

 けれども同時に楽しみでもあった。

 母のような偉大な役者たちが活躍する場所。私もそこに足を一本踏み入れることとなったという事実に高揚していた。

「意外と平気そうですね、こはる様」

「はい、緊張はしてるけど……それ以上に楽しみで……というか、内山さん。こはる様はやめてください! なんだか居た堪れないです」

「そう、ですね。現場でマネージャーが様付けだなんて側から見ればおかしいと思われてしまいますね。申し訳ない、直します」

 内山さんはわざわざ頭を下げてきたので余計に恐縮してしまった。彼は見た目に反してとても真摯な男で、私も自然と頼ってしまうところがあった。