俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

 日本とほとんど変わらない気候ではあるが、景色や人が異なるせいで吸う空気も別物のような気がしてくる。
 この時期のヴェネツィアはどうやら観光にもちょうどいい気候であり、過ごしやすいようだった。

「花宮さんだよね。今日はよろしく」

「は、はいっ……こちらこそ、よろしくお願いします」

 挨拶をしたのは今回の現場の監督であった。母よりも年上のその男性はどこか只者ではない風格を感じさせ、緊張で声が震えていないか心配だった。

「なんだこはる。さっきまではこの景色に圧倒されてたくせに、一人前に緊張してんのか?」

「……私だって緊張くらいしますよ」

 隣に立つ玲二の揶揄う声に少女不満を覚えるものの、さすがに初対面の監督のいる前では怒りをあらわにすることは出来ない。
 その監督はといえば、私と玲二の様子を観察しているようで。
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