初恋は海に還らない
星を掴む、心を奪う




「すごい。星が掴めそう」
「星は掴めねーよ」
「例えだし。例え」
「ふーん。いい景色だろ」



 現在夜9時。私は洸に連れられ街一面を見下ろせる、小高い山の上の公園に居た。


 祖父母に伝えてあるし、徒歩では時間が掛かるからと、ワンボックスカーに乗せられ、あれよあれよという間に目的地に着き、私は空を見上げて感動の溜息を吐いた。


 公園といっても子供が遊ぶような遊具はなく、年季の入った東屋と数メートルの距離ごとにポツポツと置かれているベンチだけの小さなものだ。


 その一つに腰掛け、今にもこぼれ落ちてきそうなほどの星が輝く、美しい夜空を見上げる。すると、隣に座った洸が口を開いた。




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